映像の遅延時間(レイテンシー)を数値化するユニットDPN2011Bを販売しています。「ボタンを押せば数値が現れる」ことを実現するためにパソコン上で動くソフトウエアをご提供します。GPSモジュールで遠隔地との低遅延伝送の測定も実現しました。
基本的な操作説明の動画を改定しましたので、ご興味あればご覧ください。⇒ここをクリック!
なお、遅延時間の測り方の比較については別項に詳しく述べましたので、そちらをご参照ください。⇒詳しくはこちらから(遅延時間を測るには)

本機DPN2011Bは映像撮像・伝送・表示システムにおける映像遅延時間を測定するための機材です。遅延時間を評価するのに、自らの手の動きなどの映像を撮像して、そのモニタへの反映を観測するといった、いわば感覚的なもので評価することがありますが、本機によって遅延時間を数値化することが可能となります。
ここで対象とする被測定システムは、ビデオカメラ、映像伝送機器、ビデオモニタからなるシステムとします。測定は、本機の点滅するランプ(LED)を被測定システムのビデオカメラで撮像し、被測定システムのビデオモニタ上に表示されるLEDの明滅を、本機のフォトダイオード(PD:明るさを電気信号に変える素子)にて観測します。LEDへの印加信号とPDからの明滅検出信号の差を観測し、遅延時間を算出します。 LEDが点灯する時の遅延と、LEDがオフする時の遅延を別々に測り表示します。

装置の外観を写真に示します。

遅延測定ユニット本体とオシロスコープ部
LEDランプ(左)とフォトダイオードPD(右)

当初オシロスコープをユーザの方に直接操作していただくことを想定していましたが、それは煩雑であるというご意見を頂戴し、パソコン(Windows)で動作する制御ソフトウエアAccuLatency(アキュレイテンシ)を開発しました。お客様のご要望や使いやすさの改良のためバージョンアップを行っており、現在AccuLatencyIIとしてリリースしております。
例えば、下の図のような画面にて遅延時間の表示を行います。左側のピンクバックの数字は消灯から点灯への変化時の遅延時間、右側の黄色バックの数字は点灯から消灯への変化時の遅延時間を示しています。

ここで何をもって遅延時間というかを決める必要があります。すなわち明るさに関してLED消灯時を0%、点灯時を100%とし、消灯から点灯への遷移を観測した時を考えます。遅延時間とは現物のLEDが点灯してディスプレイの映像に少し変化が見えた時点の20%までなのか、中央値である50%を過ぎた時点までなのか、ほぼ明るくなった時点の80%の時点か、色々な評価があります。
もう一つは、ビデオカメラと本機は非同期で動作しています。LEDが変化したタイミングとカメラの走査の関係は不定です。そしてクロックが一致していないので徐々に位置ずれが生じ明るさの変化にジッタ(時間ぶれ)が生じます。
小さな文字でたくさん数字が並んでいますが、①20%50%80%のどれにするか、②非同期に起因するジッタに関し指定回の繰り返し試行の中で最小、平均、最大の3通りのどれにするか、のマトリクスで9通りの数値をON時OFF時について表示しています。
さてこれを言われても一般ユーザの方はお困りかと思いますので、ON時は中間の明るさとなった50%の数値、OFF時も50%の数値の各平均値を大きな窓(ピンクと黄色)に表示しています。 さらに二ついうのも煩雑であればそれらの平均お水色の数値で論じるのも一考です。
なお、あくまでこれは例に挙げたカメラとモニタの場合であって、別の機材では別の結果が得られます。

さて、上記の測定はビデオカメラとモニタを60FPS(60フレーム毎秒)で動作させた場合ですが、24FPSにした場合が次の図です。

数字が大きくなり、だいぶ遅くなったことが分かります。
遅延を減らすにはフレームレートが重要なことがわかります。ただし、これはカメラとモニタの選択によって大きく異なります。さらにその間の伝送方法によっても異なり、当社の光送受信機やセットトップボックスは「ゼロ遅延」と謳っているように、遅延時間を最小に抑えております。

さて、被測定システムでなく測定系自体が持つ遅延の性能はどうでしょう。ビデオカメラやモニタを介さず、本機のLEDとPDを直結します。
下の図のようにLEDと同時、であります。同時という表現は不正確ですが、別途測定した結果は20マイクロ秒(0.02ミリ秒)であり十分速い性能であることがわかります。

誰にでも簡単に映像のレイテンシー数値が出せる測定器を目指して開発いたしました、遅延測定ユニットDPN2011Bについて、動作原理と測定例を示しました。
操作説明(改訂版)を動画でアップしています。⇒ここをクリック!

さて、技術のページに「離れた場所の遅延時間を測るには」を解説しましたが、ここでは当社製品の使い方について少し詳しく述べます。
まず遠隔地への伝送の遅延時間を測るために、GPSを使って時刻同期をとる付加モジュールDPN2015Bを開発しました。
衛星からの電波を受信し、ビデオカメラ側とモニタ側の時刻同期をとるシステムをなるべくシンプルな方法で実現しました。下の図のようなイメージです。カメラ側では1つ目のGPSモジュールからの信号でLEDランプを点滅させます。その映像がお客様の映像伝送系を通りモニタに表示される映像をセンシングし、そのタイミングは2つ目のGPSモジュールにて制御されるようにして遅延を測定するよう動作します。

GPSモジュールは下の写真に示す小型の形状です。(150mm×100mm×37mm:突起部含まず)
外付アンテナ(35.8X45.2X15.2mm、ケーブル長3m)が付属しており、これを電波受信場所に置いていただけれれば測定可能です。全天が望めるのが理想ではありますが、前方がそこそこ開けた場所や窓際であれば動作します。

なるべくシンプルに実現するためソフトウエアは従来と同じAccuLatencyを使用するようにしました。但しLEDの点滅速度は1秒、5秒、10秒、20秒から装置後ろ側のロータリースイッチで選択できるようになっており、被測定対象の映像遅延が概ね5.2秒以下のシステムが測定対象です。なお、撮像側でのLEDを点滅させる周期と受像側でのタイミング設定は同一にする必要があります。

測定場所でGPSが受信できないときにどうするか、測定対象が地下にあるなどなど、後述の延長ケーブルでは対応できない場合です。このためにタイミングキーパなる製品を開発しました。タイムキーパは会議などで時間・時刻を管理する人ですが、本機タイミングキーパはタイミングだけを保持するものです。
GPSが受信可能な屋上や広場などでGPSモジュールが生成するタイミングをタイミングキーパDPN2016Aに同期させます。これをバッテリーで動作させたまま、ハンドキャリーで測定場所へ移動します。続いてタイミングキーパをGPSモジュールの代わりに接続して遅延時間を測定します。

タイミングキーパはGPSモジュールと同じ寸法で、内部には発振周波数が正確なOCXO(Oven Controlled Xtal Oscillator, 恒温槽制御水晶発振器)を搭載しています。GPSのタイミングを長時間にわたって維持して、あたかもGPS受信機が手元にあるように動作します。

タイミングキーパは、GPSなしでも使えます。例えば同じ敷地内の別の建物間のような場合、下の図のように2台のタイミングキーパを使って、マスター機を基準として、もう一台のスレーブ機を同期させます。これらを測定場所にハンドキャリーして同じように映像遅延時間を測定することができます。タイミングキーパの点滅周期は1秒、5秒、10秒、20秒から選択可能です。この場合も、撮像側でのLEDの点滅周期と受像側でのタイミング設定は同一にする必要があります。

このようにタイミングキーパを使うと、様々な場面で遅延測定を行うことが可能です。さて、測定終了後に「ほんとにタイミングを保持しているだろうか?」を確かめる機能も追加しました。基準にしたGPSモジュールもしくはマスター機に接続して、タイミング誤差を測定する機能です。1秒周期の時には0.1ミリ秒単位、5秒周期以上なら1ミリ秒単位でタイミング誤差を表示します。測定中すべての誤差を保証するものではありませんが、タイミングのずれはOCXOの周波数誤差による一方向へのずれが主であると考えられ、一定の確認を行うことが可能です。

上記のようなGPSやタイミングキーパを使うような遠隔地ではなく、しかし、少し離れた場所の測定に関して本体とLED・PDのケーブル長についてしばしばお問い合わせをいただきます。本体とLEDのケーブル長は2.5m、本体とPDのケーブル長は2.5mを出荷しますが、オプションにて本体とLED間については10m~100mのご指定長の延長ケーブルを追加いたします。なお、本体とPD間については延長ケーブルはございません。
また、遠方からLEDを撮像せざるを得ず、LED像が小さすぎて光量が足りない場合には、600球のLEDアレイユニットDPN2014Aをオプションとしてご用意いたしました。

600球のLEDアレイユニットDPN2014A

利用シーンを整理します。
次の図が基本接続です。 ビデオカメラとビデオモニタが近傍にあれば、DPN2011基本構成で測定を行うことができます。
すなわち、各ケーブル長が図のように2.5mで間に合う場合です。
ビデオカメラと被写体であるLEDとの距離が近すぎて、ピントが合わなくても構いません。但しオートフォーカスなどの機能が働いて、ピント合わせで像が変わる場合はその機能を止めたほうが良いと思われます。ともかくLEDをなるべく大きく映し、ビデオモニタに映る点灯時と消灯時の明るさの差がなるべく大きくなるようにします。

基本接続:ビデオカメラとビデオモニタが近傍にありDPN2011基本構成で測定

ビデオカメラとビデオモニタの距離がある場合は、次の図のようにオプションのLED延長ケーブルを使用します。
ケーブル長は10m~100mで製作します。

ビデオカメラとビデオモニタが離れていてLEDを延長ケーブルで接続して測定

上の二つの例のように、ビデオカメラの近傍に標準LEDを配置できない場合、例えばビデオカメラが天吊りになっていてアクセスしにくいとか、2つのビデオカメラ系の比較を一気がLEDを動かすのが煩雑であるとき、などです。このような場合、遠方の大きなLEDとしてLEDアレイユニットDPN2014Aを次の図のように配置し測定します。600球(=20X30)のLEDが約145X220mmに配置されています。しかしながら遅延の追加はほとんどありません(0.1ミリ秒未満)。
この場合も、 ビデオカメラ側はズームしてLEDをなるべく大きく映し、ビデオモニタに映る点灯時と消灯時の明るさの差がなるべく大きくなるようにします。 LEDアレイ近くの照明は消灯したほうが良いかもしれません。

ビデオカメラ近傍にLEDを置けないのでアレイユニットDPN2014Aを使用、ビデオカメラだけが離れている場合

さらに、ビデオモニタと被写体であるLEDアレイユニットが近くに配置できない場合は、次のように延長ケーブルを併用します。

ビデオカメラ近傍にLEDを置けず、ビデオモニタとLEDアレイの距離も離れている場合



その他、ご質問等あればお気軽にご連絡いただければ幸いです。
デモ機をご用意しておりますので、試用・評価をご希望の場合にはお声がけください。

なお、ソフトウエアAccuLatencyはお客様からのご要望などを反映して、バージョンアップを行っております。
内容は下記をご覧ください。

既にお買い上げいただいたお客様で最新版をご希望の場合は、当社営業窓口またはホームページお問い合わせフォームにてご連絡ください。
その際、メディア・マニュアルの発送手数料のご負担をお願いいたします。

【ご使用中のお客様に】
2024年2月リリースの新ソフトウエアAccuLatencyIIのインストールには下記は必要ありませんが、弊社製の旧ソフトウエアAccuLatencyのインストールの際には、使用しておりますPicoTecnology社のオシロスコープ制御ソフトウエアをインストールしていただく必要がございます。そのオシロスコープ制御ソフトウエアは同社から提供されているPicoScope6をご使用ください。2024年2月現在、同社ダウンロードページ https://www.picotech.com/downloads のDiscontinued softwareの下のPicoScope 6で出てくる「PicoScope 6.14.69」をダウンロードしてインストールしていただく方法がございます。

PicoScope 2000シリーズの下からはPicoScope 7というバージョンになっており、これは問題が生じる可能性があります。
ご使用のPC変更など、再インストールの際には上記にご注意ください。