このページでは、離れた場所の遅延時間を測る方法について述べます。
つまり、被測定システムのビデオカメラとビデオモニタとの間の距離が長い場合です。

当社の遅延測定ユニット単体の動作原理については「遅延時間を測るには」の項を、製品については「製品・サービス」の項を参照ください。

離れた場所の遅延時間を当社製の遅延測定ユニットを使って測定するには次のような方法があります。
(1) 遅延測定ユニットのLED延長ケーブルを使う
(2) 点滅する光源を明るく大きくするためLEDアレイユニットを用いる。
(3) 双方向の映像伝送ができるなら、往復測定して測定結果を2分の1もしくは妥当な按分をする。
(4) GPSモジュールを使う
(5) タイミングキーパを使う。

ケーブルが届く範囲であれば(1)LED延長ケーブル(オプション品)を用いれば、最大200m(100mX2本)まで延長可能です。
また、光源を強力にすることで解決できるなら(2)LEDアレイユニット(オプション品)が使えますが、これも限界があります。
(3)については、双方向の映像伝送ができる場合で図示すると次の図のような場合です。

地点Aで撮像した映像を伝送し地点Bのビデオモニタに表示、その映像を地点Bのビデオカメラで撮像し逆方向に伝送したものを地点Aのビデオモニタに表示します。地点Aのビデオカメラとビデオモニタは近くにあるので、往復の映像遅延が測れます。地点Bで装置の配置が変えられないなら、鏡を使うことも有効かもしれません。ただし、地点Aと地点Bで同じ機器を使っていないとか、上りと下りで違う方式で送っているとか、ややこしいかもしれません。

そこで、衛星からの電波を受け精密な時刻を求めることができるGPSを使うことを考えました。上記(4)です。
一般にGPSは正確な位置情報を求めることができその機能はスマートフォンにも搭載されています。今欲しいのは地点Aと地点Bでの正確なタイミングをとることであり、GPSの時刻情報だけを用います。機器を複雑にすれば色々なことができますが、シンプルにタイミングの同期をとる目的ですと、GPSで生成される1PPSと呼ばれる1秒周期のパルスだけを使います。基本的な原理図を次に示します。

地点Aと地点Bとは離れていますが、GPSで生成されるタイミングは全く同一です。あたかも電線で結んだように同じ信号が映像送出側である地点Aと、映像受像側である地点Bとで共有できます。この原理を使って遠隔地間でも遅延測定をすることができます。この原理を使って当社製遅延測定ユニットに接続可能なGPSモジュールを製品化しています。
この方式は、1PPS信号を基準としているため、測れる映像遅延に上限があります。1PPS信号のデューティ比を50%とすると点灯が0.5秒消灯が0.5秒となりますので、マージンを入れ0.4秒程度の遅延を上限としています。

別の課題は測定場所でGPSが受信できるとは限らない、つまりビデオカメラやビデオモニタが例えば建物の地下にある場合の対応です。接続ケーブルをオプションで200mまで伸ばすことは可能ですが、それが仮設でも敷設できない場合もあります。そこでGPS受信が可能な場所、例えば屋上や広場でタイミングをとらえ、それをバッテリーで保持しつつ測定場所までもっていくことです。下の図に示します。

タイミングを保持するためには、周波数が正確な発振器が必要です。それにはOCXO(Oven Controlled Crystal Oscillator)すなわち温度が一定になるように制御された恒温槽の中の水晶発振器を使います。機器の名前をタイミングキーパ(Timing Keeper)と名付けました。タイムキーパは会議などで時間・時刻を管理する人ですが、本機タイミングキーパはタイミングだけを保持するものです。そしてこの機器をGPSの1PPSにタイミング同期させたのち、バッテリーでバックアップして測定場所にハンドキャリーし、測定システムの基準とすることで映像遅延時間を測定できます。遅延測定の動作原理は同一です。
実際に、直線距離で60km離れた場所で、(4)GPS同期と(3)双方向伝送÷2を比べたところよく一致していることが確認できました。

さて、このタイミングキーパは別の使い方ができます。
下の図のようにGPSなしにタイミングを保持する機能だけを用いることで、前記の(5)です。

1台のタイミングキーパをタイミングの基準であるマスターとして、もう1台のタイミングキーパをスレーブとして同期させます。その後ハンドキャリーでそれぞれ測定場所に移動して使用します。これも遅延測定の動作原理は同一です。
利用シーンは、例えば同じ敷地内の2地点間の測定の場合です。どちらかで同期をとって片方のタイミングキーパをハンドキャリーするような場面です。

この方式の利点は1PPSの制限がないので映像遅延時間が大きな時にも使用可能であることです。当社の機器では点滅周期が1秒だけでなく、5秒、10秒、20秒に対応しています。点滅のデューティー比は50%ですので測定できる最大遅延時間は8秒程度です。

タイミングキーパを使って測定が終了した後にタイミングを確認する機能も付加しました。確かめる機能も追加しました。基準にしたGPSモジュールもしくはマスター機に接続して、タイミングキーパ内部の測定用カウンターを動かしてタイミング誤差を測定し表示する機能です。1秒周期の時には0.1ミリ秒単位、5秒周期以上なら1ミリ秒単位でタイミング誤差を表示します。測定中すべての誤差を保証するものではありませんが、タイミングのずれはOCXOの周波数誤差による一方向へのずれが主であると考えられ、一定の確認を行うことが可能です。

さらなる利用法としてはタイミングをキープしたまま電車で移動するなども不可能ではありません。

以上、遠隔地間での映像遅延時間を遅延測定ユニットで測定する方法について記載しました。実際の当社製品は製品サービスの項に記載しましたのでご参照ください。