従来の遅延測定ユニットDPN2011Bは映像の遅延時間(レイテンシー)を数値化することが可能で、様々な分野のお客様に活用いただいています。
このたび映像以外に音声その他様々な情報コンテンツの遅延が測定できる遅延測定ユニットマルチDPN2021Aの発売を開始しました。
本機には標準で映像と音声の遅延時間測定機能が備わっており、従来のLEDランプ/フォトダイオード(PD)に集音用スピーカ/響音用のマイクが追加されています。
映像の遅延測定と同様の原理、すなわち本機のスピーカから断続音を発生し、それを被測定系の「マイク~伝送系~スピーカ」を通して聞こえてくる音を本機で収音し、オーディオ系の遅延時間を計測します。
映像と音声とのタイミング差はリップシンク(Lip Sync, Lip Synchronization)と呼ばれ、これがずれていると唇の動きの映像と聞こえてくる音声が不自然に感じますが、このタイミング差を正確に数値化します。

遅延測定ユニットマルチDPN2021A外観写真
遅延測定ユニットマルチDPN2021Aシステム構成図

たとえばコンサートホールで演者のパフォーマンスを体感する場合、演者の映像すなわち光が空気中を伝わる時間は無視できるのにくらべて音声は相対的に遅いため、観客には音声が遅れて聞こえているはずです。
コンサートホールでの音ズレは高々数10ミリ秒なので通常は気にならないレベルですが、一方、コンサートの様子をビデオカメラで撮影・集音してその映像と音声がリアルタイムに配信される場合はどうでしょうか。

映像データと音声データとの重畳タイミングの伝送系設計における違いや、実際の映像と音声との処理量の違いなどにより、配信先のモニタ/スピーカでは映像と音声の出力タイミングがズレる可能性があります。
さらに配信先のモニタ/スピーカから視聴者までの距離によっても音ズレの感じ方が変わってきます。

したがってコンサートの配信を例にとると、視聴者にとって「リップシンク」は演者とビデオカメラの距離、ビデオカメラの映像・音声処理、伝送系の遅延、モニタの映像・音声処理、モニタに対する視聴者の位置といったいくつもの要素が絡んでくるといえます。

従来、感覚に頼ることの多かった「リップシンク」調整ですが、上記を総合して「リップシンク」を行うためにDPN2021Aで演者と視聴者間すなわちPerformer to Audience(P2Aと称します)の映像・音声遅延を正確に測定してリップシンクを調整できます。

映像・音声遅延測定の概念図
制御画面

DPN2021Aは映像・音声以外の遅延測定にも対応できるよう、ロジック出力・入力も設けました。
たとえばハプティクスの遅延測定等、お客様の様々な遅延測定の用途に対応可能となっています。

なおDPN2021Aは従来のDPN2011Bのオプションをそのまま利用することができます。
とくにGPSモジュールDPN2015B、タイミングキーパDPN2016Aと組み合わせることによって、遠隔地間の映像・音声遅延測定なども可能になります。

遠隔遅延測定の概念図