この頁では光ファイバを活用する波長多重の構成、光のルートを切り換える光スイッチ、光を分ける光分配などについて様々な例をあげます。
お客様の接続要求に対するソリューションとして、様々な方法があることをご紹介する目的です。
光ファイバには大きく分けてシングルモードファイバ (SMF) とマルチモードファイバ (MMF) があります。このページでご紹介するのは、主として伝送距離が長いシングルモードファイバに関する構成です。マルチモードファイバおよびそれ用の機器やモジュールは価格が安い代わりに伝送距離は高々数百メートルとなります。
ここに述べた機器やモジュールは当社独自に開発しているものもありますし、市販のものも少なからずございます。機器やモジュールを当社からご提供することのほかに、それらを組み合わせたシステム構築やそのコンサルティングなども当社がご対応いたします。
お客様の状況に従いケースバイケースで選択が変わってきますので、ご要望などを当社営業窓口もしくはお問い合わせページよりお聞かせください。

波長多重

まずは波長多重 (WDM:Wavelength Division Multiplexing) の説明です。
下のような光送信部と光受信部のペアを光ファイバで接続することを前提とし、それが複数ある状態を下の図に示します。

この場合に、光ファイバを1本にするには下の図のように送信側はMUX (マックス:Multiplexer:多重器) で多数のファイバを1本にまとめ、受信側はDEMUX (デマックス:De-Multiplexer:多重分離器) で分離します。各送信部の出力光の波長はλ1, λ2, …, λNという具合に異なる波長を使います。使用するMUX, DEMUXもそれに合致したものにします。λ1の波長をMUXのλ2対応のポートに印加しても出力には何も出てきません。
このようにすることにより、多数必要だったファイバが1本で済みます。

波長多重をわかりやすく述べると、虹の七色のそれぞれの色ごとに情報を載せて混ぜ、一つのビームにして同時に送るようなものです。受け側ではプリズムで分光すると各色の成分が出てくるのでそれぞれ利用すればよいという訳です。光ファイバ通信に使うのは目に見える光よりはずっと波長の長い光で、場合によってはかなり正確に波長を制御していますが、原理は同じです。

波長多重と言ってもいくつかのレベルがあります。
    DWDM:Dense Wavelength Division Multiplexing、波長が正確で数十以上の波長を使用可能。波長はITU-T規格 (ITU-Tグリッド) にて規定されている。
    CWDM:Coarse Wavelength Division Multiplexing、波長の正確性はそこそこで数波の波長多重をする
    1.5um/1.3um:1.5um帯 (Cバンド) と1.3um帯 (Oバンド) の2波を波長多重
性能とコストは逆になるので、どれを選択するかは状況によります。

使用するトランシーバは出力波長が自由に変えられるようなもの (Full-Tunable) 、DWDM波長に固定したもの (FIX) 、ITU-Tグリッドにはのっていないもの、単に1.5um帯 (Cバンド) 用、1.3um帯 (Oバンド) 用、など波長の選択がいろいろあります。さらに、トランシーバの特性としてどれだけ遠くに伝送できるかの仕様もあります。但し、光ファイバの損失が理想的で途中の接続点の損失は考慮されないので距離の仕様には注意が必要です。

さて、次にイーサネットやテレセッション (当社の双方向高精細映像伝送システム) など情報伝送が双方向の場合について述べます。イーサネットでA地点からB地点の片方向に映像伝送すると言っても、一般には逆方向にも制御信号が流れます。
この場合、光送信と光受信が一体となった光トランシーバモジュールが使われ、それが多数あるので次の図のような構成を多重化することになります。

これを2本の上りと下りのファイバに多重化するにはMUXとDEMUXを用いて次の図のように構成します。
ややゴチャゴチャしていますが片方向の図と見比べていただくと、2つを向きを変えて重ねただけとなっています。
ここでλkとλk’ (k=1~N) は同じ波長でも別の波長でも構いません。同じ波長の方が部品の種類が減って有利かもしれません。

このように、波長多重技術を使って使用するファイバの数を減らすことが可能です。では「どのくらいの波長を多重化できるのか」ですが、例えば10Gbpsの信号ならば80波とか96波の信号を多重化することができます。実際には各部品の不完全性とか様々なパラメータがあるので、慎重に設計する必要があります。しかしながら例えば8波程度まででしたら比較的シンプルに構成することが可能です。

ファイバを減らす方法はほかにもありますのでご紹介します。
下の図のようなシンプルな双方向接続を前提とし、これを1本のファイバで伝送する方法を述べます。

接続としてシンプルなのは使用するトランシーバをBiDi (バイディー:Bi-Directional) のトランシーバにする方法です。送信と受信の波長が異なるトランシーバで送受波長が入れ違いになる2個がペアとなります。光ファイバ自体には伝送方向の限定はないのでこのようにすることが可能です。

但しお客様の機器にこれを自由に使用できるとは限りません。いわゆるベンダーロックインと呼ばれ、機器ベンダーが自社のトランシーバしか使用できないようにする場合があります。機器が使用するトランシーバに制御ラインからアクセスし、トランシーバ自体の情報を確認して使用可否を判断するというものです。システムの品質を保つと共に値崩れを防ぐためでしょうが、トランシーバの選択が限定的になります。そこで、例えば次のようなコンバータを挿入して使いたい機能の特殊トランシーバを使うことも可能です。BiDiへの変換だけでなく光の波長を変えたり、伝送距離が所望の特性のトランシーバを用いたり、いろいろな応用があります。

このようなコンバータは一般にはメディアコンバータと呼ばれます。この図で※の部分は電気接続ですが、市販されている通常のものにはイーサネットを対象とした制御ICが挿入されています。しかし対応できるプロトコルが限定されてしまい伝送できない場合があります。当社ではこれに対処するために※の部分をプロトコル無依存にしたメディアコンバータを製品化しています。当社独自のテレセッションはイーサネットを使用しないのでこの機能は必須です。

トランシーバにはいろいろな種類があり、性能と価格が異なります。それを詳しく書きだすと長くなるので割愛しますが、例えば次のような機能や性能の項目があります。
   伝送ビットレート (例:SFP+は10Gbps、QSFPは40Gbps、QSFP28は100Gbps)
   使用する光ファイバ(SMF:シングルモードファイバ、MF:マルチモードファイバ)
   光波長帯域 (1.5um帯 (Cバンド) と1.3um帯 (Oバンド) など)
   波長可変か否か
   出力光波長の正確性 (DWDM, CWDMほか)
   伝送可能距離 (例:80km, 40km, 20km, 10km, 2km, …)
   特殊機能 (BiDi)


双方向伝送で光ファイバを1本で済ませる方法として、サーキュレータと呼ばれるデバイスを用いる方法もあります。下の図に接続を示します。サーキュレータというデバイスは次のような機能があり、信号が伝送される方向が限定されグルグル回る方向に伝わります。
   ポート1から入った光信号はポート2に出力される
   ポート2から入った光信号はポート3に出力される
   ポート3から入った光信号はポート1に出力される
1行目と2行目の機能で双方向通信が実現されます。

では、波長多重してかつサーキュレータを用いれば大量の情報を1本のファイバで双方向に伝送できるか? 答えはYESですが、実際には使用デバイス等の不完全性や付加される損失などによって性能が制限され、例えば伝送距離が減少します。波長多重してサーキュレータを用いる方法も万能ではありません。

なお、当たり前すぎて書くまでもないかもしれませんが、波長多重というような光レーヤでの操作をしなくとも、低速のトランシーバを束ねてより高速のビットレートとするような方法もあります。下の図で例えばピンクの部分は10Gbpsのイーサネット、青色の部分は100Gbpsのイーサネットとする方法です。極論すれば、お客様の装置自体が高ビットレートの送受信機 (トランシーバ) が使える装置を利用すればよいわけです。

しかし、一般には高ビットレートのトランシーバや装置は高価ですし伝送可能距離も短くなるので注意が必要です。技術的には不可能ではないにしろ、高スペックのものは価格が高いのが一般的状況です。さらに、ファイバの分散特性による信号劣化とか、光アンプでの増幅の容易さとか、ややこしいこともありますが、ここでは割愛します。
ともかく、複数のプロトコルを混ぜる、例えば映像伝送のテレセッションとイーサネットのデータ伝送を同時に送る、などという場合は波長多重が第一選択です。

光スイッチ

次に光スイッチについて説明します。下の図のように光送信部が多数ありその光信号を一つの光受信部で受ける場合を考えます。

常に大量のデータを同時に送っているのなら、上記の構成を下の図のようにMUX, DEMUXで波長多重を行い光ファイバを1本に減らすことが可能です。

もし同時に送る必要がないなら、下の図のように光スイッチを使って1本の光ファイバで伝送することも考えられます。
この光スイッチは入力としてIN-1~IN-NまでNポートあり、その中から1つの信号を選択してOUTポートに出力するもので「N対1」光スイッチです。
図示していませんがどの信号を選択するかの制御信号 (電気信号) を光スイッチに印加する必要があります。一般にはこれは高速である必要はないので、低速の回線で十分です。

光スイッチにはいろいろな種類があります。基本的には指定した光入力ポートと指定した光出力ポートを接続することです。すなわち入力と出力はそれぞれ複数で、下の図のように入力ポートはIN-1~IN-N、出力ポートはOUT-1~OUT-Nのようなスイッチです。入力ポートと出力ポートは指定に従って任意につなげることができ、光マトリクススイッチ、NXN光マトリクススイッチなどと呼ばれます。下の図では光送受信部1~Nがあり、それらを任意につなげることが可能です。例えば光送受信部1と光送受信部2を繋ぐには、IN-1とOUT-2を接続し、IN-2とOUT-1をつなぐようにします。テレセッションの多地点接続もこのような形となっています。

他の光スイッチの例を示しましょう。NXN光マトリクススイッチにおいてN=2だと2X2光マトリクススイッチ、これを二つ使ったデュアル2X2光マトリクススイッチを使って

光スイッチのバリエーションとして、波長選択光スイッチ (WSS:Wavelength Selective Switch) と呼ばれるスイッチもあります。これはポートどうしの光接続を行うだけでなく、同時に通す光の波長をも選択する機能を持ったスイッチです。例えば下の図のように接続してみます。N個の送信部からの光信号はMUXで波長多重されて1本のファイバで伝送され、WSSのINポートに印加されます。INポートの光のうち指定した波長を指定した出力ポートOUT-K (K=1,2, … , N) に接続することが可能です。ポートの選択と波長の選択を組みわせることによっていろいろな接続ができます。また、入出力をひっくり返して複数の入力ポートのうち一つを指定し、かつその波長を選択するような使い方もできます。さらに様々な使い方ができますが、ここでは基本的な紹介にとどめます。

光分配器、光結合器

光スイッチは「切替」を行うわけですが、単に光信号を分ける機能である光分配器 (Divider) があります。これを逆向きに使えば光結合器 (光カプラ: Coupler) です。
下の図のように一つの光送信部の信号を光分配器を介して複数の光受信機につなぐことができます。原理的に光送信部からの光パワーは分割されますので、一つの光受信部あたりの光パワーは小さなものとなることを考慮してシステム構築する必要があります。今まで述べた素子は不完全性による損失はいろいろありますが、光分配器・光カプラの場合には原理的に損失があるわけです。例えば、光分配器で2つに分ければ3dB、4つに分ければ6dB、8つに分ければ9dBの原理損失があります。これに素子の不完全性による損失が加算されます。

実際には光受信部は離れた場所であるかもしれないので、下の図のように光分配器から長い距離のファイバを介して光受信部がつながる場合もあります。
当社の指揮者モニタはこのような接続となっております。

光分配器をひっくり返して使って光結合器として、複数の光送信部の光信号を1本のファイバにまとめることもできます。すなわち多重器すなわちMUXの代わりとすることもできます。MUXよりはシンプルなデバイスですが、このときは原理損失が加わりますのでそれを十分考慮する必要があります。

損失を補うには増幅する、これには光アンプ (EDFA: Erbium Dopet Fiber Amplifier) と呼ばれる特殊なファイバを使ったモジュールがあります。EFDAは1.5um帯の光信号用で広く用いられています。一方1.3um帯の光信号はEDFAでは対応できず、それでも増幅する場合のはSOA (Semiconductor Optical Amplifier) を用いますが、あまり一般的ではありません。

以上、波長多重・光スイッチ・光分配など様々な構成とその機能を説明しました。ここの記述だけでは、お客様のご要求を具体的にイメージしていただくことは難しいかもしれません。
お客様の状況に従いケースバイケースで構成や使用機器やモジュールの選択が変わってまいりますので、ご要望などを当社営業窓口もしくはお問い合わせページよりお聞かせください。
ここに述べた機器やモジュールは当社独自に開発しているものもありますし、市販のものも少なからずあります。これらを組み合わせたシステム構築やそのコンサルティングなども当社がご提供いたします。詳細はお問い合わせフォームからご連絡ください。