全てを光で伝送し処理するDOPN(ダイナミック光パスネットワーク)を利用する際には、地点間の光ファイバを確保しなければなりません。それによって各種メリットを実現できますが、実際にはファイバの確保が難しい場合も少なからずあります。
品質の確保されたIPネットワークを使ってこの問題を解消する方法があります。映像信号を非圧縮のIP信号に変換し、IPネットワークを用いて遠隔地に伝送し、映像信号に戻す操作をします。

なお、4K60フレーム毎秒の映像を非圧縮で送ろうとすると、HDMI信号の場合は約18Gb/sの帯域が必要になります。最近は25Gb/sイーサネットというのもありますが、長距離伝送では一般的ではないのでどうも納まりの悪い数字です。上記は色深度が4:4:4というフルスペックですが、これを4:2:0というフォーマットにすれば半分のレートで済みますので、10Gb/sイーサネットとの親和性が良くなります。
IP伝送するとはいえ非圧縮ですので、圧縮処理およびそれを解く処理はなく、それによる遅延増加はありません。ネットワークの品質を確保する、すなわちQoS(Quality of Service)として、10Gb/sを確保して伝送処理することによりネットワークの遅延を最小にすることができます。唯一、多少のジッタ(伝送時間のゆらぎ)が残るので、1フレーム分のバッファを設けるためその分の遅延が増えます。また、10Gb/sの回線を一つ確保すれば、それで上り下り双方向の4K60フレーム毎秒の映像伝送を行うことができます。もちろん音声の重畳も可能です。

ならば、ネットワークすべてをDOPN(ダイナミック光パスネットワーク)ではなく、帯域を確保したイーサネットにしたらどうか、というご意見もあろうかと思います。基本的にテレセッションで使用しているDOPNはシンプルな構成となっています。IPネットワークは汎用的でいろいろなことができますが、設定や保守運用管理が複雑であるという一面があります。あくまで基本はシンプルな光ネットワークDOPNです。それが使いにくい場面で、例えばファイバの確保が難しい場合に限り、大容量の「土管」としてイーサネットのIP伝送を併用するという位置づけになります。
同一都道府県内のファイバは比較的確保しやすいですが、県間をまたぐ場合、ファイバが存在してもコスト的に厳しい場合が少なからずあります。ゼロ遅延のテレセッションで思いっきり遠くと接続したいのに、ファイバの確保がスムーズでない、という事態に対処することができます。
実際、国立研究開発法人 産業技術総合研究所では東京都内に光スイッチを中心としたDOPNのネットワークを持ち、別途茨城県つくば市にも同様のDOPNネットワークを有していまして、この二つの間を10Gb/sのIPネットワークで結んで4K双方向非圧縮の超低遅延の映像伝送を実現しています。二つのDOPNの間を10Gイーサネット回線でブリッジする構成となります。その構築と保守を弊社が担当しております。 接続のイメージ図を下に示します。
なお、ここで利用している10Gb/sのIPネットワークは国立情報学研究所が運営する学術ネットワークSINET5であり、教育機関や研究機関で利用することが可能です。

以上のように帯域を確保したイーサネットを活用することにより、高精細映像を非圧縮でIP伝送することが可能となり、テレセッションの応用が拡がります。一般的な圧縮技術を使ったIP伝送とは全く違う低遅延(低レイテンシー)なシステムを構築いたします。

なお、説明の各所に低遅延・ゼロ遅延という言葉がありますが、実際にそうなのか、どう数値化するのかにお応えするため、遅延測定ユニットを開発しリリースしました。技術の項、製品サービスの項に詳しく書きましたのでご参照ください。